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まちづくり

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http://dutoit6.com/355


転載記録


いま僕がまちづくり、ときいて、
どんなことを思い浮かべるんだろうなあ、と考えてみます。
そうしたらなんとなくだいたい浮かんでくるのが、
地域の特産品を生かした商品作り、
古民家を再生したカフェやゲストハウス、
就農・就職支援をはじめとした移住促進施策、
うんうん、なんとなく、いわゆるそれっぽい字面になりました。

だいぶむかしの話だけど、
僕は学生時代、山形のまちづくりを事例に卒論を書きました。
蔵を生かしたカフェを作ったり、暗渠となった堰を復活させたりして、
まちに、少しずつではあるけれど、昔ながらの景観が戻ったと。
書いていて、ずっと、なんだか言葉にできない、むずむずする違和感がありました。

なんだろうこれ、なんかおかしいなあ。
好き好んで自分でまちづくりを取り上げて卒論を書いてるのに、
いやなかんじ、なんかしっくりこない。

それってなんなんだろうと、ずっと考えていました。

最近、それが少しずつわかってきたような気がします。
まちづくりのなかにある、
特産品づくりや、古民家活用、移住支援、
うん、わかります。
それによって、観光客や移住者は増え、外貨獲得や、人口の増加、税収増加など、
まちはうるおっていくんでしょう。
うんうん、まさに「まちづくり」、

あれ、とそこで僕は思ったんです。
ほんとうにそうだっけ。
まちづくりって、誰のためにあるんだっけ。
そのまちづくりで、まちは幸せになるんだっけ。

「まち」って、なんなんでしょうか。
税収が減ったって叫ぶ市役所の人のこと?
それとも、移住者のことなんでしょうか、観光客のこと?

僕はちがうと思った。
まちに生きてるのは、まちのひと、じゃないのかなあ。
そして、まちづくりは、「まちのひと」のためのものなんじゃないかなあ、と思った。

まちのひとって、
地元の中小工場につとめるおじさん、
地方銀行の事務員のお姉さん、
家で内職をしている専業主婦のおかあさん、とか、たぶんそういう人なんじゃないかなあ。

彼らは果たして、古民家がシェアハウスになって何か儲かるんだろうか、
オシャレな特産品が増えたら嬉しいんだろうか。
移住者が増えると、むかしのお城を再建すると、駅前にモニュメントができると、
彼らは幸せになるんだろうか?

いま、世間でいわれてる「まちづくり」のなかに、
ふつうの、ふつうのひとは、どこにもいないような気がする。
まちづくりの施策、そのどこにも、
「まちのひと」のためになるような施策はないように僕には見える。
そんな「まちづくり」はきらいだ、と僕は思う。

いまはなんだか、外側にしか目が向いていないように僕には見える。
でも、勝手にひとが減っていくようになってしまったいまの地方で、
外側から人を連れてくることが、本当の解決策だとぼくには思えない。
日本から人が減っていってるのに、
日本のうちがわで、他のまちからひとを連れてきて、
「人口が増えた」「観光客が増えた」なんて、詭弁。

まちのひとたち自身が、子どもは産みたくない、と思うようなまちに、
早くこのまちから出たい、おら東京さいぐだ、と思ってしまうようなまちに、
どうやって移住者は定住するんだろうか?
どうやって移住者はこれからの生活をしあわせに過ごすことができるんだろう?

だからもう少し、まちづくりが、まちのひとのためのものになったらなーと思う。
まちのひとがここで子どもを産みたいなって、生きていて楽しいなって、そうなっていったらいいなあ。

地方銀行の事務員のお姉さんを、
どうやったら幸せにしてあげられるのか、僕にはわからないけど。
でも、まちのひとが幸せに生きられるまちになったら、
人口なんて、外側から連れてこなくたって、
勝手に内側で増えていくんじゃないのかなあ、と僕は思う。

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普段なら僕の記事はここで終わりがちなんだけれど、
こないだ、まちづくりってもしかしたらこんなのかな、って
思うことがあったので、もう少しだけ。

こないだ、徳島県の上勝町にいきました。
上勝町には、株式会社「いろどり」という会社があります。
高級料亭などに、季節感を添える「葉っぱ」を提供する会社です。
そのメインの働き手は、おばあちゃんたち。
おばあちゃんたちは、山をまわり、木に登り、
すいすいと葉っぱを集めている(らしい)。

いろどりは、横石知二さんが上勝でおこした会社(正確には第3セクターが創設者)。

年金をもらっているどころか、むしろ税金を納める側にまわっているおばあちゃんが、
このまちにはたくさんいるらしい。
高齢化がめちゃめちゃ進んでいるにも関わらず、
かかっている医療費は県下一少ないらしい。

ばあちゃんの話を聞いてみたいと思って、上勝の農協にいってきました。
すだちのにおいのする搾汁所の奥手に、いろどりの搬入場所がある。
すると、来るわ来るわ、車にいっぱいの葉っぱを積んで、
おばあちゃんたちのバンが次々に農協にやってくる。

徳島・上勝の農協にて。おばあちゃんたちが葉っぱを持ってくる。

徳島・上勝の農協にて。おばあちゃんたちが葉っぱを持ってくる。

忙しそうなおばあちゃんの一人を捕まえて話を聞いてみたら、
いろどりを始めてから、全然風邪をひかなくなった。
毎日すごく充実してるよ、と破顔。87歳だって。信じられない。
まだ全然話してもいないのに、
「忙しいから、そろそろいいかい?」と言って、おばあちゃんは笑って去っていった。

むちゃくちゃだ、とぼくは思った。
むちゃくちゃすげえ。むちゃくちゃうらやましい。
上勝は、車で走っていても、なんにもないまちでした。
最近は移住者も増えて、cafe polestarRISE&WINなど、
おしゃれな店も増えてはきています。
でも、なんっにもない。車で走っていて、外側から見えるまちには、
楽しそうなことはどうやらほとんどない。
でも、何もないように見えるまちのその内側は、すごく盛り上がっている。
普段、ゲートボールをしているはずのばあちゃんたちが、
すごく充実そうな顔をして、稼いでいる。

きっと、それがまちづくりってことなんじゃないかなあ、と思った。
外側には見えないけど、それでいい。
だって、外側から、すごいね、いいね、って言われようと、言われなかろうと、住んでるひとには関係ないもの。
褒められなくても、遊びに来てもらわなくても、まちのひとはそこに住んで、生きているんだもの。
その、「まちに生きている人たち」がこうして笑顔でいられること、
それを「まちづくり」って言うんじゃないんか?

道の駅には、僕には見えない内側にいるおばあちゃんたちの写真集が置いてあった。
読みながら、なんかしらんけど泣いてしまった。
この人たちは、なんていい顔をして笑うんだろう、と思った。

わかんないけど。
「ゲートボールなんて、やる暇もないねえ」と笑ったおばあちゃんの顔、
きっとこれがぼくが見たい「まちづくり」の、
ひとつのカタチなんだろうな、となんとなく思った。


by uraluz | 2016-01-27 10:47 | life | Comments(0)

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